三十七度二分

ふるせ なつみ

恋なんて春の季語だと思ってたささくれの手が汗ばんでくる

シャンプーの香が潮風に負けぬようもいちど髪を伸ばす六月

下駄箱にハートの切手の封筒が届いていたら読まずに食べて

太陽が見張ってるからビニ傘の中に隠れてキスをしようよ

もし君のどこが好きかと聞かれたらキリがないけどとりあえず海

もし空を飛べたら君がいた町の灯りをまぶたに受けに旅立つ

すれちがう人の耳からマサムネの声が呼んでる僕の恋人

ありがちなあだ名も君に言われると南の島のまじないめいて

誰にでもやさしい声で話すひと 僕のおへそをどうぞ破って

いつもより多少長めのため息の末尾は僕が食べてあげます

ぶきっちょと照れ屋のためのあいことば(サンジュウナナド・ニブノ・テノヒラ)

君とただひとつの景色になりたくていびつなりんかくを組み合わせる

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