::「もう春がきているらしく」 田翔子

咀嚼するだけのあなたを見てるのが安心でありもどかしくあり

真向いておんなじ鍋をつつくのになんてことなく別れて帰る

さっきまで笑いあってたはずのひと 刹那は回る山手線そとまわり

明月院私のよこにあのひとがいるかのように歩いてしまう

ささくれを引張るときに似たようなさびしき痛み吾を抱けよ

うつくしくなければ使い終わったら丸めてキレイに捨てて下さい

浜の夜に七里歩いた友といて目もあわせずに共に笑って

きしきしと音をたててる物干しでしばらくぶりに夜空に願え

こころにもないこと言えぬあることも言えぬ我らはくちなしとなり

いまわたししあわせなのよ見ていれば分かるでしょうよおあいにくさま

夜の海にざぶざぶ入っていけるかもしれないくらい怖くはないの

かなしみを隠しながらも川沿いの道をゆくなり 月が出ている

川の端を見るふりをして君の背をたしかめている夏がもうすぐ

駄目だった 今夜は眠る明日の朝先のとがった靴がはきたい

仕様がないじゃないのいまに雨あがる裸足で古寺の床をふみしめ

ただ君が私を好きでないだけで他には何の障害もない

叶わないそりゃ仕方ない月の出る今夜は早く家に帰ろう

新潟の酒を含んでくちびるはかつてない程色あせていた

バイト後のつかれをいやすためだけに肩にもたれて第3台場

蝋梅の匂いがしてるこの道を歩いているときだけならふたり

改札に吸い込まれたらもう二度とこっち向かないような人だった

どうしようにもなく駅に残されて学生街はまだ夜じゃない

ふるさとを小型車はしるまっすぐの道の向こうに旅荘むさし野

もうはるがきているらしくあたたかくそのうち忘れてしまうのだろう

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