::梁 小林友紀子

まかがやくプールに幾度父は子を放り入れしや晩夏の記憶

憎みあふ姉と妹黙したり夾竹桃の枝しなりたり

百日紅燃えて咲きたりおとうとの遺影の眸の統ぶるこの庭

喧騒のごとく朝日は差し入りぬ森の縁(へつり)をわれ巡るとき

サイレンの長き尾を追ふ覚めぎはの夢のうちにて火を捕へたり

目覚めれば指の間に透きとほる水掻きを持つ人となりけり

うがひする喉のふるへに向日葵の風にそよげる花弁思ひつ

みずからの影をうつして歪ませるグラスの底の果てなき遊び

水遣れば透きとほる家漆黒のおほき敷石あらはになりぬ

ピアノ弾く後ろ姿の姉の顔正面より見し家人(いえびと)あらず

告げえざるままに死にたる愛の数赤きカンナを腕に抱へて

憎しみといふ愛、愛といふ憎悪、ペーパーナイフで手紙を開ける

車窓より見ればさみしき家々の屋根にあふるるノウゼンカズラ

川べりをさまよふは母 永遠に夕焼けてゐる後ろ姿の

一瞬にして訪るる日没を家族誰もが怖れつつ待つ

真夜中に幾千の蝶飛び立ちぬスタンドピアノの形崩れて

扉からもるる光の眩しさに背中より入る未知なる部屋へ

目に見えぬ無数の梁の渡されて抱きあふまま倒れゆく家

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