::若葉の表情 木村瑞穂

洗うたび紺から青へ褪せてゆくジーパン穿いて二十一歳

豆の花咲く畑道自転車をとばす 胸まで白くなってく

手を振って見知らぬ人が会いに来る予感薫らせ茉莉花開く

気付かれていいやと決めて陽を返す柿の若葉の表情で会う

ためらわず「土浦なんて」君の吐く「なんて」真鯉のはためく響き

二週間後には見上げる葉の緑 とうもろこしは肩辺にそよぐ

モミジイチゴなわしろいちご小桑の実色づく順の変わらぬ故郷

地図帳の霞ヶ浦で眠りいる渡せぬままに乾いた四つ葉

向日葵の顔の暗さよ とりあえず笑った後の静けさに似て

虫の音は信号待ちのバスの窓突き抜けて毛穴突っついてくる

橡の実がぱんと路上で弾ければうつむいてても来る新学期

夕暮れを遅らせまいと拍をとる明日咲きそうな桔梗の蕾

軽くベル鳴らして我を追い抜いていく弟は今日より学ラン

縁側に足投げ出せばすいすいと血流に入る昼秋日差し

ゆっさりとせいたかあわだち草揺れる卒論テーマ〆切の朝

さっきから会話の中につやつやの椎の実混ぜてることに気付けよ

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