::太陽に触れる 清水寿子

銀の雨こまかき夜の図書館の和式便器の止まざる流れ

オブラートにのりきらざりし粉薬 天の川より涼しげにあり

珈琲にミルク潜らす左手とそをかき乱す右手の動き

雛のごと口まで開けてうすあをの目薬滴るのを待つてゐる

完成も間近きビルのエレベーター二基が並んで交わす約束

道の上(へ)のマルボロライトのボックスを踏めば今なにかが作動しはじむ

まさきくもあるかな今朝の目玉焼きぱつくり割れて二つ入りなり

もつ鍋が喰ひたしと聞き振り返る駐輪場に無数の自転車

唐突にある勇気湧く二番線上り電車に風浴びせられ

わきの下に傷を隠せる一人なり 輝けわれの一回の生

Oh Yeah 花火両手に回ったら光が糸を引いて 行けさう

助手席に軍師を乗せてハイウェイを北へ ぴりぴり来る武者ぶるひ

テンガロンハットで蝶を追いゐしが国境あたり眩暈してならぬ

山賊に宝の地図を詰められて獣の瞳となりしピーマン

ひるがえりひるがえりして生きませう 熱い硬貨を噴水に投ぐ

太陽にかつて触れたる手とみればコロナビールをうまさうに飲む

日食の砂漠を歩く犬がゐてソルティドッグのめぐり濡れをり

ロケットを打ち上げるって云ふことは宇宙にfuck you なのだらう

「世界を流産してしまいさう」さにつらふ夕陽のなかの女神の笑ひ

月の顔、顔の不思議と思ひ継ぎ耳のま深き闇に至りぬ

くろぐろと文字の連綿 文字こそは炎みちびく道にあらめや

暁闇の国立浮力研究所 飛ぶぞ大きな雲形定規

天体を敬称つけて呼ばふことあはれ湯船に毛が浮いてゐる

あかさたな浜をただよふ赤蜻蛉(あきつ)やがて群れなし夕陽にかへる

車椅子を鳩に囲ませ爺さんは遠い空まで行つちやうつもり

ひたりひたり一匹の冬迫り来る 奥歯で胡桃砕く間も

ウィンドウズ立ち上がるのを待ちをれば万葉集は鞄のなかで

太陽は縁から沈む はなはなとコーラの気泡ひつきりなしに

銀が降り白が昇れる雪の日に不等号など思ひたまふな

虹の色あと一色が思ひ出せず思い出せぬまま切手を舐めぬ

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