::Frusatology 間崎和明 |
|
夕星(ゆふづつ)のか行きかく行きこの道にふるさとぞ思う夕なりけり ふるさとに父はいませりいばりして憎悪すべきはいつも金星 不可視なる光を見しやおとうとのゆまりするとき箒星(ははきほし)たつ オールトの雲より星は巡り来ぬふるさとの酒はかくまでからし 吾を父と呼ぶものもあり酒なくてふるさとひとをいかでしのばむ 曽祖父母祖父母父母われ子孫曾子かつてありしやさなる呪怨も あしうらに母星をかるくひっかけて酔っぱらったらそこがふるさと かへるべき場所にはあらで焼酎に氷を落すFrusatology a 鬼。 間崎和明 東洋に鬼棲むといふものがたり女に永く伝はりにけり はなびらが宙宇をわたり恋人の言葉をなべて許す手筈が ゆきゆきて薄が原におちあふも革命なんて信じちやゐない 俺ならば火をかけるてふ妄想が独りで住んでゐる六畳間 夏すぎて秋過ぎかかりひとりきり 葱を刻んでひとしきりする 不安 ふわりと大きくなれば早朝の太平洋にゆまりをそそぐ 俺も鬼の咽喉を声音を指先を持つもの、指を切りつけてみて 日本を残さぬためにやはらかい水の器を眠らせにいく a 苦い 間崎和明 白という色の多さに眼をふせる雪の午後だよねえおとうさん 失踪の男の影がくらぐらと真昼日柔く地球を縊る かなしいがこれがおまえのむすこです母より若い喉仏です 完全なものをつぶさに思うとき気がふれるまで月の近さよ 戦争が起きるだろうと三人でつぶやいている。サボテンが咲く、 金柑を奥歯で柔く押しつぶし苦ければまだ戦前じゃない 火が見える、眠ったならば。ねがえりをうてば冷たいシーツのにおい 咳をしているとこころは冷めてくる鎮痛剤もひかりもにがい 咳き込んでいるのは俺か 真夜中に体を折って考えている 明日よりも昨日が綺麗うつぶせの俺の上いま火が掠めゆく たとえば、と呟いてみるひとひらの百合の花弁に翳さしている 夕暮に男はかなし豆腐屋の喇叭ばかりが攻め立ててくる ゆうぐれておればふりむくひとりなり一日眠れば春がきたのか 屋上のフェンスを越えて一行の詩歌のようにとぶものが咲く 一本の煙草をのめば夕暮の目白を降りて酒飲みに行く 生活は破綻している 夕暮がことりことりと近づいてくる 『ノイエザッハリッヒカイト』と呑みながら呟いてみる 叱られながら さんさんとキムチを咀嚼しておりぬ我のほかみな去りゆきしかば 煩悩の空華燦たる早朝の早稲田をひとり突き抜けてゆく 輝いているのはきっと一昨日に忘れていった水筒だろう 初夏のコロナビールよ戦争が麦生に注ぐ血の如くあれ どちらからともなく夏をほふるべく指の形をくらべてみたが a 薫酒たはむる “吉井勇へのオマージュ” 間崎和明 酔狂に送れる一日毎に我が酔夢はあをく鱗(こけ)に連なり さなりさなり酌まぬものらに午の日はりりと輝きをれば虚しき 琥珀てふ酒ありて思ふ年月の甕の上に過ぐ音といふものを 酒瓶をいだきて昼を過ぎにける 日よ汝は月を抱きたりしや ゑひにけるものらはうたふ美酒は愛しかなしと宿世をうたふ さな飲みそ身をやぶるとて君笑まひ酒酌むほどに狂(ふ)れゆきにけり 博うちて旨酒酌みて我らみな日を戴くも牙折れてゐる モツ焼きのをうなよ盃に頬あてるわれの酒癖をな言ひそ 酒に ふはふはとあるいてゆけば花弁にふれたるゆびをかなしとぞ思へ へびいちごほのかにあかくふみゆきつ汝のくちびるは酒酌まざれば |
|
back to index |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||