::秋の明晰 岡本潤

梅雨空に銀河を紡げ真夜中の娯楽はなぜか今日も洗濯

過積載摘発しおる国道を子猫が渡る私も渡る

口笛をふくとき空気あらたまる君の名前が思い出せぬよ

地下鉄は我を乗せずに発車せり梅雨のにおいを残したるまま

酩酊の頭は音を切り捨てて貨物列車の連結を見ゆ

病院でレジのバイトとでくわせば吾(あ)をこの街の住人と決む

郊外でハンバーガーを食う土曜ファミリーという音感を知る

一票を投じたい人いないけど母校ではない学校へ行く

出世とは朝の電車の椅子取りでときに譲って後悔をする

遅れ来る電車を待てる夕まぐれ晩餐のなく残業のなく

借金は返されぬまま忘れけり十円玉や千円札や

服を脱ぎ地によこたわる横浜の丘には南風が吹きおり

変わる世にありて変わらぬ師と飲めば大き悩みはアマンドになる

ギターとは音の王道ではないとジェフ・ベックは言ういま世紀末

世を捨てよだらだらせよとそそのかすニルバーナを我は好まず

空間と時間の壁をひょいとこえベック・ハンセンふたたび来たり

音楽は友とつきあうアイテムの一つとなっている世紀末

高原でバスを降りればそれまでの眠気が秋の明晰となる

ブランコの母子を写す父もまたゆれゆれている山麓の朝

朝未き避暑地のテニスコートには人影のなくボールは二つ

太古よりアサギマダラは飛ぶと言う仄暗いかの谷の朝焼け

よき人と暖炉で語る夕まぐれ愛と遊びと歩みについて

ギターなど弾き語る人あらわれて我らが夜は統べられてゆく

深いこと話そうとして旧友に会いおのろけを聞かされている

都心にて最後の巨大プロジェクトああもう空が切り売られゆく

日盛りの青山墓地を人がゆく傘より蝶が飛ぶはずもなく

院生と老いた教授が答案をまだ数えてる教室のすみ

三振をとりし投手に「パパ」と言う子らが我らの敵意をそげり

応援の声が苦笑に変わるなり人事部長がいま登板す

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