::パンとある一日 清水寿子

シャッターを八時に上げるそのことが誰かの朝を押し上げるべし

いつもの人がいつものパンを購っていく われをいつもの店員として

人はパンのみに生くるにあらざれど春のパン屋のふらんすあんぱん

ブレッドの袋の口をく 繰(く)り畳(たた)ね針金で閉じるまでの三秒

五枚切りに五人家族を見るときに食パンの列はしずかな家並み

るいるいとパンをならべて それにしても胃袋というやっかいなもの

レジ打てばわれは通訳われは巫女パンと貨幣のやりとりに立ち

数枚のコインを交わす名目で指を触れさせあうのが本当

前世は剣だったとか 今はただパンつかむのみの金属・トング

あんぱんの優しい強さこの黒いものを隠して平静でいる

剣よりもペンが強しと言える日もパンはペンより強いであろう

お客様、お待ちでしたらお隣へ。お先にお待ちの方からどうぞ

レシートを渡そうとして拒まれて何ぞこのさびしさは さびしゑ

一円の収支合わねばエプロンをとるまでずっと一円のこと

その先に袋が口を開けていてパンの終末まがなしきかな

トングみなふるふる揺れて満月を店の真上に招いているよ

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