::俺たちの銀河へ 宮澤英邦 |
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パラダイス銀河 食卓に生えたきのこが笑うんです みだらな不協和音みたいに ほらごらん僕の目玉の底にいるこのカタツムリは記憶喪失 頭蓋骨にはりめぐらせた蜘蛛の巣で君の宇宙を感じ取りたい 無邪気さで興奮しながら僕の手が弄んでいた白いてぶくろ 耳に想う恋物語は軟骨の括弧でくくりあった巻き貝 感触の荒い惑星だったので愛撫の仕方がよくわかりません キスだけはいつも激しいチューリップに恋のいろはを教える花瓶 月桂樹の裁きをうけたおとといは風車に骨を砕かれました a 女ともだち 茜色のカーテンのゆらぎ この秋は溜息の海で溺れてみたい 浮きたったこころを咎められたのか香水の壜の蓋が失くなる 情熱を冷まそうとして待つ間何度も弾いた恋のエチュード 逢うことがとても怖いと知ったときなぜか眉毛を長く描いたの マニキュアを見つめる仕種 瞑想の似合う女に見られるために 両膝を組んだドレスの薄衣(モスリン)に透ける弱さと未熟と臆病 珈琲の残りをまわす 彼の見る時計の針をもどそうとして 「時代遅れの曲のような会話には残念だけどあくびがでたわ」 足指に薔薇をはさんで差しだして「女ともだちに触れたことある?」 途惑いを隠そうとしてきつく抱くことで仕返しするのはやめて あなたにも憩いの場所はあるはずで爪でたどった背骨の航路 a 天使の創作主題による七つの短歌 十五世紀 天使は睫毛に流れ着く 君の涙の大航海期 十六世紀 奇跡を知らない君のため天使の群れで空はいっぱい 十七世紀 世界の裏に墜ちてゆく天使のあとを追いかけていた 十八世紀 天使が悲歌を唄っても君の耳にはもうとどかない 十九世紀 本能的に知ったのは天使もやがて死ぬということ 二十世紀 最後の夜に逢えるなら君と天使の話をしたい 二十一世紀 天使の死んだこの世界 君は楽しむふりだけをして |
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