::二十歳　木村瑞穂

直球を出すよ例えば打たれてもバットに痕を残す気迫で

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十歩先階段登る君の背に小さいオリオン当てはめてみる

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ＣＤのケースに光る指紋一つ星雲仰ぐ瞳にて見つめる

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体内にラッシュアワーの人走る「やあ」と後ろから肩たたかれて

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君が好きだと言った鉄塔その日から人格持ってひょろりんと立つ

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書き終えた君へのメール五周程マウス回して送信決める

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明日借りに来てくれるかな三センチ歌集ぴょこんと突き出しておく

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コーヒーの横でひっくり返ってる眼鏡シオカラトンボの形

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ぐいぐいと漕いであなたと並んだらするよブランコの上の告白

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レジの吾に耳紅くしておとなりの中学生が出す「少年ジャンプ」

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江ノ電がカーブして不意に水平線　目を細め見る癖はいつから

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降りてくる白いおしゃべり　国語学演習寝てる生徒も起こす

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押されつつホームを進む朝しばしファイティングポーズの闘士となりて

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まっさらの痛みを常に生きるごと白を引きつつ光る一機よ

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弟に彼女が出来て身長を抜かれた十五の私に還る

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二十歳とはバイトしてても授業でも緑の扉が見える羞(やさ)しさ