::メルカトル図法 吉原 克

初職探し

吾を産みし日の母のこと推す朝にスーツが慣れず花を踏んだ   。

(家に帰ると弟の荷物は無く卓上にメモがあった)

当面はマンドレイクを抜くときの声を聞くためバイトをします

才能の骸葬る既視の後 内定通知折り曲げてみる

ついたちを「いっぴ」という日僕たちはソープランドを襲ってみようか

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義務教育の回想

「かっちゃんはバイクに轢かれて死にました」と書いたら賞をくれました

事後を見て「ルーズソックスみたい」なんて言い得て妙の事を言うなよ

買うだけで満ちたふりしてマルボロを封切らぬまま捨ててきました

ユミちゃんは死刑ごっこの囚人の嘆く演技がとても上手で

サカキバラ等の名字に憧れて猫を殺して僕は吉原

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田原町ック半蔵門

初霜をそっと口へと運ぶ日は処女めくキスを演じてあげる

エルでなくアールで話すラ行だからその唇を信じてみるよ

もうちょっと左といえば下を掻く出来の悪さも厭じゃないのよ

カラオケで声が出ないと右を向く首の筋にも愛しているよ

留守がちな君の視線を「今日こそは!」淡く塗りこむ爪に葉桜

触れられることを待つより触れようとのばす爪先なぜ蛙色

食パンがうまく焼ければ会話などなき食卓をそっと愛そう

気まぐれにイーストフードつまんではよしなしごとを諦めてみる

ずれることくい違うこと逃げることトーナメントで演じてみたり

抱擁がオーナメントと化す朝を雪の色した糞が彩る

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植物連鎖

無駄口を叩かれ過ぎてせっかくの芋きんぴらもあおいろ。あか。

暗闇を怖れて眠るししとうの茎の傷みを忌み鼻をかむ

効酸化作用狙ってルイボス茶カップ麺へと注す徹夜明け

澄む水が臭う不義理もプレコには効かぬようですきゅうりパリコリ

百年後 野村沙知代の悪口を言ってみせると青汁を飲む

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カーニバル

そりゃ蟹が縦に歩けることくらい知ってるでもどうせガニ股なんでしょ

猿回し猿を回せど皿まわし出来ぬ道理がなぜに醜い

猿似の先生は話す「人間は早産なんだ」ああ肩が凝る

狐さえ嫁入りせねば吊られたるてるてる坊主は許されしものを

うなされて目覚めた僕の黒夢を食むが如くの亀の笑み 佳し

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習字の修辞

ビタミンをまずは摂りなよ左手に深くタトゥーの鳥飼う前に

五月待つ鳥の鳴く声戸に聞けば春とて寝過ごすべきにやはある

君と乗る電車が駅をまた過ぎる近づくリミット時間よとまれ

隣接車両に鈴木の居るを見て「ああ鈴木だ」とまた鈴木見ゆ

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要素

ビルの灯を数え終えたら死にますと嘘をついたら殺されました

その傷を隠すためなら腕時計 見せるためなら包帯ですね

また舌を噛むのでしたらもう二度とレモンソルベは差し上げません

なら何故に「忘れて」なんて泣きながら真珠で首を吊ったのですか

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