::鎌倉吟行会報告(六月十一日) 宮澤英邦

五月下旬頃、私の提案で急遽、鎌倉吟行会が決定した。当日は鎌倉駅に十時に集合。小雨がちらつき、天気はよいといえなかったが、梅雨の鎌倉も風情があるとお互いにいいきかせあって出発した。
参加者は宮澤、間崎、三原、川田美妃、川田愛、籔本、橋元、そして水原先生の授業で知り合った石川さんと、その友達の海老原さんの総勢九名。最初に行く予定だった覚園寺は、雨の日は拝観できないとのことで、予定を変更した。
一同で話し合った結果、浄妙寺周辺を散策することとなった。バスで浄妙寺に着き、参拝もそこそこに、境内に石釜ガーデンハウスなるカフェがあるのに気づき、早速休憩タイムにした。石釜パンと珈琲を囲んでリッチな気分を満喫しつつ、しばし歓談に花を咲かせた。その後、近くの報国寺に赴き、妖気ただよう見事な「竹の庭」を散策する。竹林で記念撮影などした後、三十分ほど歩き鎌倉でも有数の「花の寺」として有名な瑞泉寺に向かった。
たまたまご在宅だった瑞泉寺住職の歌人、大下一真先生の御厚意に与かり、御抹茶と和菓子を御馳走になった。山崎方代研究家でもあられる大下先生のユーモアにあふれた御人柄に接することができ、たいへん楽しいひと時だった。
その後、大下先生に紹介された「鎌倉飯店」にて昼食をとり、鶴岡八幡宮で一時間ほど作歌の時間をとった。雨天だったが日曜日ということもあって大勢の人で賑わっていた。午後五時ごろから近くの喫茶店で歌会を開いた。詠草と短評は左記のとおりである。

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一、亡き人の歌くち口ずさ號めば偲ばれる洒落た雨にも似た歌ごころ  宮澤英邦

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リズムが悪いということと、「洒落た」がどこまで掛かっているのかがわからないという意見がでた。ちなみに亡き人とは山崎方代のことであった。

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二、竹降ると天気予報に告げられておもむろに傘閉ぢてゐたりき  石川美南

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ミステリーゾーンとしての「竹の庭」体験が「竹降ると天気予報に告げられて」という上句のインパクトによく表れていて評価が高かった。実際に竹林は傘がいらないほど鬱蒼としていた。

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三、竹林の僕ら濁ってゐるだらう白きあじさゐ汝に手向けむ  間崎和明

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竹林とあじさゐの取り合わせに疑問がでた。「濁ってゐる」と「白き」の対比により、神聖な場所における自省が感じられるという意見もあった。

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四、黒光る古都の小道をかけぬけるこの身にせまる追手の予感  川田愛

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「かけぬける」の主体が、「この身」なのか、「予感」なのかで解釈が割れた。鶴岡八幡宮での、実朝暗殺を踏まえた発想が面白く、緊張感の静かな高まりが伝わってくるという意見がでた。

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五、みえぬもの仰ぎてをれば足裏より雨ののぼり来とつとつつとや  橋元優歩

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「とつとつつ」というオノマトペによって、雨が足裏から染みてくる感じが神秘的に伝わり、「みえぬもの」の発する気がみんなに共有できたようであった。

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六、傘中にひとりひとつの光ありふたりを包む潮含む雨  川田美妃

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「包む」と「含む」が似ているところに難ありの指摘があった。しかし、人へのぬくもりが感じられ、雨の鎌倉の風情がうまく詠めているという意見もあった。

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七、きりきりと手のひらを刺す気天地介し折りからの雨に濡れている竹  海老原志穂

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竹の鋭さが「気」になって刺激してくる有り様が面白いという意見がでた。「気」がどこまで掛かっているのか分かりづらいという指摘もあった。

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八、ふくらみを増してく乳房 せんねんの秘密したたるあじさいの花  三原由起子

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「あじさい」と「乳房」の対応が面白いという意見がでた。鎌倉の「せんねんの秘密」と女性の「乳房」の秘密が掛かっていてエロチックだという意見もあった。

歌会終了後、皆で居酒屋にてお酒を飲み(飲みすぎた?)最後まで楽しい吟行会だった。

鎌倉は、何度でも訪れたくなる魅力的なところでした。最後に、突然の訪問にもかかわらず温かいおもてなしをして下さった大下一真先生に、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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