::チャイナ・タウン 天道奈央 |
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二〇〇〇年、、三月十二、十三日。Sとふたり横浜へ。 春節の護符輝かし西門は人を呑み込む 来(lai)・来(lai)・来(lai)LA 甘栗の皮を器用に剥ぐまでは思いだにせず指の細きを 寄り添えば右頬腕に沿うことを認識しつつ肉饅頬張る 俺的の「的」の意固地さ=分け与えられることなきキムチ豚饅 夕風も金糸銀糸にふちどられ 弥生ヨコハマチャイナ・タウン 芝海老のまろき輪郭沈めそののち…白湯(パイタン)の如き現実 口づけよ 小籠包(シャオロンポウ)のまなぶた目蓋に熱きスウプを隠し持つから 凶凶しいネオンのシャワー 欲望にかまけて指を絡め取り** Sの目に宿る原色渦巻いて 幻惑されたいネオン★サイン 又同じコトでワタシを泣かせてる笑うS(サディスト) 我的愛人(ウォーターアイレン) 春過ぎて鳥啼き魚の目に泪「おまえの泪、たった三ペソ。」 この夜の白き寝台柩とし 世にも悲しき二人とならん 白い窓 白い溜息 白い夜 音符書き込むための五線紙 しゃほしゃほと湯満ちる音聞きながら重なりあいぬ 波たてぬよう 白き喉 湯にさらされて 朱\呪(しゅ) に染まりSの眼差し微かに動く ココナッツ・ミルクのような白濁液 視界覆えばけして、冷めない。 鏡台に貝殻並べ手に取りしSの耳殻のうずまき愛し 凍りたるマンゴスチンを溶かすべく窓辺に置けば月光の香(こう) 海月らが波のまにまに愛し合う氷菓窓辺で溶けゆく夕べ< 細ければ香ばし麻糸(マーファ) 似てるのは 夕べ噛じったSの背骨か 昨晩は何事もなきかのように 朝粥啜るSの横顔 白粥に沈む皮蛋(ピータン)憎みたる 心掠める不安に似るため 飴色のジェリーに沈む茘枝(ライチー)はそっと含んだ冷えた唇 竜眼(ロンガン)は発花しその後発果して発火す宇宙空間にて タピオカの水晶玉を飲み込みて 我が身も浄化せんと思いつく 膝に手、背筋のばして待ちわびぬ 芝麻(チューマー)ひとつ、ハピネスふたつ
願はくは星々光る日々を過ごさん 明天(あした)、后天(あさって)、大后天(しあさって) ビル陰に犬と椰子の実封じ込め病みて病みゆく小路小路は 思い出は死んでゆくもの この街もSも私も メメント・モリ |
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