::風・風鈴 田中 祐太郎

サワサワと空に浸み入る竹の葉の音重なりて寒風の中

一ひらの桜は回る風の中 春風消えり色を残して

夏夜霧肌に小雨の降りをりて煙消えゆく灰色の空

真夜灯光るみみずの動めくも生ける木立を見つけるもまた

夏風を身体に浴びんと外出れば夕空に響き止まぬ蝉時雨

秋風に吹かるる死骸を感じてか 鳴き足らんとす蝉の残り夏(が)

ヒュールリと吹き抜かんとす夜風立ち家屋の闇に風鈴の鳴く

すすき野にひっそりと佇む野仏の吹かるる風に何をか見るらん

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