::あかとき 間崎 和明 |
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鳩よ、今日も、雨に崩るる残照と熔けゆく邑(まち)の間(あひ)を漂へ 紫陽花はやがて忘るる肉親の貌を束ねて水にうたれぬ 六畳に月が射すとき匣舟は厳かに鳩を夜へと放つ 五十九個の珠連なりしロザリオを切るべしその種を残さぬやうに ロザリオの珠転がりて 原罪はみな凛々として薔薇におぼるる 葡萄は甘く満ち足りている 内奥を碧に冷ましたる罪として 埋火の燻るやうに葉桜に残の花弁が戦慄ひていた 少年は桜に冷めた群青の背を貫きて眠らむとする 俯ひた男の上を火が越えるやがて暁だけになるまで おまへは火 牌を打つとき欣然と輝きを増すわれの煙草火 人が火になるには丶を二つうつだけであるのに今更気づく 火は浄し 人の作りしものなべて燃えざるものはかつてなかりし 一本の蘇鉄とならむ暁に吼ゆる鴉の意識とならむ 弓を引くやうに静かな毒(トキシン)の音がすずらんから匂ひだす 最善の道を見出せ。重力に抗して空へ咲く花の如 無花果の皮をふはりと脱がせつつ こんな知恵など欲しくなかつた |
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